母の味噌づくり

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母の母は、普通に味噌を作っていた。 涼しいどこかに樽があって、 子どもの頃の母は「取ってきて」と言われて、 木べらで掬っていたらしい。 それだけの話で、特別なことではなかった。

でも母自身は、ずっと作っていなかった。 スーパーに味噌はあったし、 働きながら「作る」を全部抱えるような時代でもなかった。 忙しかったんだと思う。それ以上はわからない。

だから、最近始めたと聞いたとき、少し意外だった。 しかも麹から作る、という。

春になると、米を蒸す。 麹は和室に置いて、布をかけて数日待つ。 台所じゃなくて和室、というのが、 なんか普通の家っぽくていい。

麹が起きるまで、数日。
和室の空気が少し変わる。
甘いような匂いがして、
母が時々、布をめくる。

温度を確認して、匂いを嗅いで、また布を戻す。 数字じゃなく、手と鼻で見ている。

仕込み終わった味噌は、階段下の収納に入れる。 発酵アトリエみたいな場所ではなく、 荷物とかと一緒に、ひっそり置いてある。 半年くらいかけて、そこで静かにできていく。

祖母がやっていたことを、母が今になって始めた。 なんか好きだな、と思っている。 うまく言えないけれど、そういう感じ。

text — homeflow編集部