透けるほど薄いカップを、いつか引き継ぎたい。

homeflow — cup & light

実家に、母が大事にしているカップがある。

祖母の家から来たものらしい。

祖母が亡くなってしばらくしてから、母はそのカップを二客だけ持って帰ってきた。たくさんあったはずなのに、遠慮して二客だけ。

その二客が、今も実家にある。

はじめて見たとき、まず薄さにびっくりした。

たぶん、ボーンチャイナなんだと思う。でも、素材は正直なんでもいい。

光にかざすと、向こうが透ける。
カップなのに、向こうが見える。
そんなことがあるのかと思った。

柄もある。

少しだけ金の細工があって、何かの絵も入っている。でも、いちばんは薄さだ。

薄いから、きれい。
薄いから、少しこわい。

持つと、壊してしまいそうな気がする。洗うのもこわい。使うものなのに、使うのに少し気をつかう。

でも、そこがいい。

母も、そのカップがとても好き。

二客だけ持って帰ってきたところに、母らしさがある気がする。欲しかったけれど、全部は持って帰らなかった。大事だったけれど、少し遠慮した。

だから余計に、その二客が静かに見える。

私もいつか、そのカップを引き継ぎたいと思っている。

母が大事にしている間は、母のものだ。
今すぐ欲しいわけではない。もらいたいわけでもない。

いつか、そのあとで、私のところに来たらいいと思っている。

たぶん、私もあまり使えない。

壊しそうで、棚にしまってしまうかもしれない。たまに出して、光にかざして、やっぱり薄いなと思うくらいかもしれない。

それでもいい。

あの薄さを、知っている人でいたい。

母が好きだったものを、私も好きだと思ったこと。祖母の家から、母の手元に二客だけ来たこと。光にかざしたら、向こうが透けて見えたこと。

そういうものごとを、いつか一緒に引き継ぎたい。

透けるほど薄いカップが、実家に二客ある。

今はまだ、母の棚の中にある。

text — homeflow編集部